強制調査とは、国税犯則取締法に基づき調査を行う場合で、税法に定める罰則規定を適用するための証拠調べをおこなうための権限です。査察の調査がこれにあたります。
この場合も、査察の調査のすべてが強制ではなく、強制調査ができるのは、裁判所から令状を受けて検査する場合に限られます。
さらに、人的拘束力は一切ありません。あくまで、差押などを行う権限を有するにすぎません。
これは次の理由があります。
税金の犯罪捜査とは、過去の事実に対する捜査です。つまり、証拠が隠蔽されないように、証拠となる事実を差し押さえる必要があります。ですから、「モノ」を差し押さえるための強制調査権限が必要なのです。では、人的拘束=逮捕権はというと、これはありません。もちろん、公務執行妨害行為など、強制調査を妨害するなどの行為があれば逮捕される場合があります。
ただ、検察官が証拠隠滅の恐れがあるからと、逮捕拘留を判断することはあります。この場合も、査察官には逮捕権限はありません。つまり、強制調査といえども、基本的人権は配慮されなくてはならないのです。
過去において、査察調査は全て強制調査であると誤認して、質問顛末書を書かされた事件を担当しました。質問顛末書に応じる義務は一切ないのですが、強制調査の当日、査察の書いたシナリオどおりの質問顛末書に署名押印しないと強制調査は終わらないと査察官が嘘をついて、虚偽の質問顛末書を採取された事件がありました。人権侵害に敏感な感覚を税理士はもたなくてはなりません。
任意調査とは、税法の基準に適した税務申告をしているかどうかを確認するため、税務職員が質問検査権に基づいて行う調査です。
基本的に、税務申告が正しいかどうか、国民として税務職員に説明する義務はあると考えます。それは、公平に税負担がなされているか、誤った申告をしてないか。それをどこかでチェックしなければ、公平は保てません。憲法の「納税の義務」の要請に応じた国民の義務と考えます。
その点について国税庁が昭和51年に発行した税務運営方針によれば、「調査と指導の一体化」をめざし、調査を通じて今後は適正申告を行なうための指導に力点をおくことを主眼にしています。
つまり、任意調査とは、適正申告のために国民を指導する場であるわけです。
指導の中には、正直に申告した人との差をつけるために、懲罰的に行政罰である重加算税をかけることもあります。
実際に税務調査を受ける場合は、営業の邪魔にならないような時間と場所で税務調査を受ければよいのです。
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